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【恐竜SFレビュー#6】ビヨンド・ザ・ジュラシック・パーク

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恐竜SF紹介コラムの第6号はマイケル・クライトンの小説『ロスト・ワールド―ジュラシック・パーク2』を紹介する。
先月、『ジュラシック・パーク』を紹介したが、本作はその続編小説である。ジュラシック・パークのその後を描いた作品である。

 

sfgeneration.hatenablog.com

 

 

ぼくはどこかに、太古のむかしから恐竜たちが生き残っている場所があってもおかしくないと信じている。Byリチャード・レヴィン

 

科学の力で復活させた恐竜を飼育し、アミューズメント・パークとするため建設が進められていたジュラシック・パーク。しかし管理していたはずのシステムが破綻し、恐竜は人間に襲い掛かったことで計画は頓挫。パークで起きた事件は闇に葬られ、恐竜も滅んだはずだった。

 

ジュラシック・パークの事件から6年後。前作でも事故に巻き込まれ、無事生き残った数学者、イアン・マルカムは、古生物学者のリチャード・レヴィンから奇妙な話を聞く。

 

コスタリカのジャングルで大型の異様なトカゲの死体が見つかったと。

 

レヴィンはコスタリカで起きたジュラシック・パークの事件の噂を聞きつけ、マルカムにも真相を尋ねるが、マルカムはそれを作り話だと否定する。しかし、恐竜生存の真相を突き止めようとするレヴィンは、かつてジュラシック・パークが存在していた島の近隣にあるサイドBと言われる島に向かうのだった。

 

自己組織化の原理は、よい方向へも悪い方向へも働く。調和のとれた変化をもたらすこともあれば、個体数を減少させ、破滅の淵へ追い込むこともある。Byイアン・マルカム

 

サイドBに向かったレヴィンだったが、帰還予定日になっても戻ってこない。彼の身を案じた工学者のソーンはマルカムと共に、レヴィン救出のためサイドBへ向かう。

 

そして島にたどり着いたマルカム達が見たのは、全滅したはずの恐竜たちだった。

 

サイドBもジュラシック・パークがあった島、イスラ・ヌブラルと同じく恐竜を繁殖、管理するための施設が置かれていたが、今や恐竜たちが自然に繁殖する場所となっていた。果たしてマルカム達はレヴィンを救出できるのか?そして、このロストワールドから生還することが出来るのだろうか?

 

本作は前作の『ジュラシック・パーク』の後日譚であり、前作の設定を補完する内容となっている。前作の登場人物として登場するマルカム博士(と後述の一人)が本作の主要人物である。かつて数学者としての視点からパークの危険性を訴えたマルカムは、前作ではティラノサウルスの襲撃で命を落としたかのように見えたが、無事生還。再び恐竜と合間見えることになる。

 

前作、重要な要素として取り上げられたカオス理論は本作でも再びキーワードとして登場。恐竜が絶滅した要因として、恐竜の些細な行動が自然や環境に影響し、その連鎖で滅んだのではないかというマルカムの仮説として取り上げられている。

 

マルカムと同様、前作の登場人物で産業スパイだったルイス・ドジスンも再登場。彼もまたサイドBに乗り込み、恐竜の卵を狙い、他人の命を奪うことも躊躇わないヒール的なポジションだが、彼には相応の末路が待っている。

 

恐竜SFとしてはもちろん、前作と同様に生きた恐竜が登場する。肉食恐竜のカルノタウルスは実際に存在した恐竜だが、体色を周囲の景色に合わせて溶け込む迷彩能力がオリジナルの要素として付け加えられている。


サイドBで繁殖した恐竜にはラプトルティラノサウルス、前述のカルノタウルスなどが登場し、物語の発端としてレヴィンが海岸で発見するオルニトレステスも死骸として登場する。

 

ジュラシック・パークのその後が気になる方には是非とも読んでいただきたい一作である。

 

書誌情報

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書名:ロスト・ワールド ジュラシック・パーク2

作者:マイクル・クライトン

出版社:早川書房

出版年:1995年