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【恐竜SFレビュー#7】物語の舞台はパークからワールドへ

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恐竜SF紹介コラムの第7号はマイケル・クライトンの小説、『ジュラシック・パーク』の映画版を5作紹介する。小説版から拡張した新たなシリーズ、『ジュラシック・ワールド』も2作品が公開されている。

 

 「君らの興味をそそるものさ」Byジョン・ハモンド


一作目:ジュラシック・パーク


ジュラシック・パークの映画版1作目は本ブログでも取り上げたマイケル・クライトンの小説を原作にした映画だ。

 

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科学技術で復活した恐竜をCGとアニマトロ二クス技術で完全再現している。人間に近付いていくブラキオサウルス、人に迫りくるティラノサウルス、卵からふ化する恐竜などの映像美に圧倒される作品である。基本的なストーリーは原作小説にそって進み、人間に牙を剥いて襲い掛かる恐怖を思う存分に描いたパニック映画にも仕上がっている。

 

小説を基にはしているが、登場人物の性格や設定は映画版では異なっている部分もある。例えばジュラシック・パークの創設者ジョン・ハモンドは、小説版では金儲けに目が眩んでしまう強欲なビジネスマンとして描かれていたが、映画版では子供の頃から恐竜に思いを馳せてきた、少年の心のまま成長した老人として描写されている。最後、島から脱出する時のハモンドの切ない表情は印象的である。

作品情報

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作品名:ジュラシック・パーク

監督:スティーブン・スピルバーグ

公開年:1993年

 

「あんたは新しいミスをしようとしてる」Byイアン・マルカム


二作目:ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク


二作目の『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』は前作から4年が経過した、1作目の続編にあたる作品。こちらもマイケル・クライトンの小説版を原作にしているが、終盤の展開などが大幅に異なっている。

 

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本作での主役は前作にも登場したイアン・マルカムで、彼は恐竜を保護しようと考えていたハモンドの調査隊に加わり、ジュラシック・パークの近隣にあるサイドBへ向かうことになる。

 

サイドBで繁栄していた恐竜を目の当たりにするマルカム達だったが、ハモンドに代わってInGen社の社長に就任したルドローは、ハモンドの意向とは逆に恐竜を金儲けの道具と見なして捕らえていく。

 

終盤ではティラノサウルスがアメリカ本土に上陸してサンディエゴで大暴れするという怪獣映画さながらの展開となっており、強欲な人間の末路も描いている。

 

なお、マルカムには娘が登場している。気難しい性格の反面、子煩悩な側面のマルカムも見ることができ、親子の絆も描いた作品である。

 

作品情報

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映画名:ジュラシック・パークⅢ

監督:スティーブン・スピルバーグ

公開年:1997年

 

「新しい巣を作れる場所を探してるのかも知れない。まったく新しい世界で。」Byグラント


三作目:ジュラシック・パークⅢ


三作目は原作小説がなく、映画オリジナルのストーリーである。

 

本作はパラセーリング中に遭難した子供を救出するため、サイドBへ足を踏み入れることになった人々のサバイバルを描いている。一作目で登場したアラン・グラントも再登場しており、子供を探す夫婦に半ば騙される形でサイドBを訪れている。

 

本作ではティラノサウルスに続いて新たにスピノサウルスが登場。両者の戦闘が描かれ、ティラノサウルスと互角の強さを見せつけている。スピノサウルスの他にプテラノドンも登場し、空からの襲撃もスリリングに描いている。

 

三作目では原型復元器という装置が登場する。今で言う3Dプリンターに近いもので、これを用いてヴェロキラプトルの頭蓋骨を復元しているシーンがあり、先見の明が感じられる。


また、グラントがヴェロキラプトルに対して意思疎通を試みるシーンや、プテラノドンが終盤で島を飛び立って滑空するシーンなど、次回作を暗示するような展開も見られている。

 

作品情報

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映画名:ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク

監督:ジョー・ジョンストン

公開年:2001年

 

「インドミナス・レックスは自然に生まれたのではありません。設計されたのです」Byヘンリー・ウー


四作目:ジュラシック・ワールド


三作目から14年が経った2015年に公開された本作は、キャストも一新され、独自のストーリーが展開されている。

 

ジュラシック・パークの事件から22年経過したイスラ・ヌブラル島では来場客が恐竜を見て回るテーマパーク、ジュラシック・ワールドがついに完成した。毎日2万人が来場する一大アミューズメントパークとなっている。

 

イルカショーのようにモササウルスが餌に喰らいつくショーや、小型の恐竜を触ることができるふれあい動物園さながらのコーナー、草食恐竜のいる川辺での川下りと、パークの創始者ハモンドが夢見た施設となっているが、遺伝子改造によって生み出された新種の恐竜インドミナ・レックスが脱走したことで、島は再びパニックに包まれる。

 

本作では主人公オーウェンがヴェロキラプトルの調教師であり、4頭のヴェロキラプトルが彼に従い行動している

 

遺伝子技術の発達で新たに誕生したインドミナ・レックスは複数の生物のDNAが組み込まれたキメラ的な恐竜である。知能の高さと保護色によって周囲に溶け込む能力など駆使して人間に襲い掛かっており、遺伝子を操作して生命を生み出すことの危険性を問う作品である。

 

作品情報

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映画名:ジュラシック・ワールド

監督:コリン・トレヴァロ

公開年:2015年

 

「新時代の幕開けです。ようこそジュラシックワールドへ。」Byイアン・マルカム

 

五作目:ジュラシック・ワールド/炎の王国


『ジュラシック・パーク』の映画シリーズ最新作。前作から3年後、インドミナ・レックスによって引き起こされた事件でアミューズメントパークとしての施設は閉鎖されていたが、イスラ・ヌブラル島の火山が活発になっており、生息する恐竜に絶滅の危機が迫っていた。

 

前作でジュラシック・ワールドの運用管理者だったクレアはハモンドの協力者だったロックウッドの依頼で恐竜を救うためにオーウェンと共に島へ向かう。

 

火山が噴火し、溶岩が迫りくる中でのサバイバルが描かれている。本作は「復活した種族の再絶滅」がテーマであり、科学技術で復活した恐竜が火山の噴火という自然現象の中で滅ぶのを止めるべきなのか、保護するべきなのかを問う内容となっている。

 

また、インドミナ・レックスに次いで遺伝子操作で誕生したインドラプトルは生物兵器の性能を備えており、人が生命を生み出すことの危険性を改めて描いている。これまでの世界観を根底から覆す展開となっており、『ジュラシック・パーク』『ロスト・ワ-ルド』で登場したイアン・マルカムがラストで問いかける言葉が「ジュラシック・ワールド」の真の意味を示している。

 

作品情報

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映画名:ジュラシック・ワールド/炎の王国

監督:フアン・アントニオ・バヨナ

公開年:2018年

 

これまでに計5作の映画作品として公開された『ジュラシック・パーク』シリーズは、各作品で登場する恐竜や展開は異なるものの、原作小説でも言及されていた生命の再生に着手することの危惧、警鐘、それを恐れない人の強欲さが込められている。さらに、映像化したことで、襲い掛かる恐竜の怖さをスリリングに体感することが出来るシリーズである。

 

2019年9月には『ジュラシック・ワールド3』2021年に公開予定であることが発表された。恐竜が復活した世界での物語の広がりを再び見せてくれる日はそう遠くない。