何回か高位宇宙人の紹介が続きましたが、今回紹介するコルガー人は宇宙人としての特長がほとんどありません。特定の能力などはなく、肌の色が赤いという特徴があるのみです。しかしコルガー人はグリーンランタンのストーリーにおいて重要な位置を占めている宇宙人なのです。
コルガー人が初めて登場したのは1961年の『GREEN LANTERN #7』でした。地球のグリーンランタンであるハル・ジョーダンは、上司であるガーディアンズ・オブ・ユニバースに呼び出され、セクター1417担当のグリーンランタンだったシネストロについて聞かされます。宇宙警備隊であるグリーンランタンに選ばれガーディアンズによる試練もクリアしたシネストロは、故郷のコルガー星に平和をもたらすためにまず巨大な司法局を設立し住民からの相談を受け付けます。
しかし問題を訴える住民の長蛇の列ができ、解決する相手を贔屓で決めるようになります。批判を受け怒ったシネストロは批判者をグリーンランタンリングで殺してしまい、議会を解散させて独裁者として統治することで平和を実現するという手段に出るのでした。
彼の恐怖政治を知ったガーディアンズは指輪と装備を剥奪し、反物質世界にあるクワード星へと追放します。しかしシネストロはクワード人を巧みに説得・煽動し、一度ハル・ジョーダンに敗れているクワードの武器製造者を指揮してグリーンランタンに挑みます。
グリーンランタンについて熟知しているシネストロは、ハルをクワード星に転送させ黄色のエネルギーバブル（当時のグリーンランタンリングは黄色の物体には作用しないのが弱点でした）に閉じ込め、「お前のランタンのエネルギー切れは6時だ」と時計を示し、リングが使えなくなった瞬間始末しようと時間を待ちます。
しかしエネルギーバブル内でも呼吸ができることから、ハルは自分の息の二酸化炭素の分子をリングの力で押した空気圧で秘かに時計を進めており、時間前に解放され反撃に成功、逆にシネストロをグリーンバブルに捕らえるのでした。ここから、シネストロはハルの最大のライバルとして何度も対峙することになります。
永遠のライバルとしての存在
続く『#9』では、秘かにイエロー・パワーリングを隠し持っていたシネストロがグリーンバブルから脱出してハルを襲い、黄色の光で作った檻に閉じこめます。黄色はグリーンランタンリングの弱点のため、イエローリングを持ったシネストロは天敵ともいえる相手となりました。
シネストロはハルに変装してグリーンランタン・コーアに潜入する作戦に出ますが、変身を解いて檻の隙間から抜け出したハルと再度対決。この時のイエローリングはハルのパワーバッテリーがエネルギー源だったため、エネルギーを過剰に注ぎ込まれて敗北し、グリーンランタンたちがリングで作ったカプセルに閉じ込められ宇宙へ追放されました。このあともシネストロは何度もハルに挑戦していきます。
1964年の『#30』では、コルガー星で新たなグリーンランタンとしてカトマ・ツイが任命されましたがなぜかすぐに辞任を表明したため、ガーディアンズはハルを説得に向かわせます。コルガー星に着いたハルは女戦士カトマ・ツイに会い彼女の優秀さを確認しますが、彼女はイミ・カンという男に恋をしており、恋と任務の板挟みに悩んでいたのでした。
ハルはリングで秘かに怪物を作って自分やイミ・カンを襲わせるという試練を与え、カトマ・ツイにグリーンランタンの任務を選ばせます。以後、カトマ・ツイは優秀な味方としてグリーンランタン・コーアで活躍を続けました。
ハル・ジョーダンはグリーンランタンとして宇宙の平和を守りつつ地球のスーパーヒーローチーム「ジャスティス・リーグ」の創設メンバーとして活躍していましたが、それに対抗して悪人たちを集め結成された「シークレット・ソサイエティ・オブ・スーパーヴィランズ」に、キャプテン・コールドやシャドウ・シーフら地球人ヴィランにまざって宇宙人であるシネストロも参加しています。
また、1000年後の未来のヒーローチームを描いた『LEGION OF SUPER-HEROES #302』（1983年）にて、未来警察であるサイエンスポリスとしてコルガー人のニエワ・クアヴが登場しています。未来でもコルガー人は活躍しているのです。
カトマ・ツイは任務のため恋人をあきらめざるをえなかった事をずっと心残りにしていましたが、地球で新たにグリーンランタンとなった黒人男性ジョン・スチュワートとの交流で惹かれあい、1987年の『GREEN LANTERN CORPS #212』にて二人はついに結婚。全グリーンランタンから祝福されます。しかし、翌年の『ACTION COMICS WEEKLY #601』にてカトマ・ツイはスターサファイアという女性ヴィランに殺害されてしまうという残酷な結果となってしまいました。
1994年2月号の『GREEN LANTERN #49』にて、故郷のコーストシティを消滅させられたことで狂乱し反逆したハル・ジョーダンは、仲間のグリーンランタンを倒しながら本部の惑星オアへ侵攻します。これを止めるためガーディアンズはシネストロに再びグリーンランタンリングを与えて迎撃させるという非常手段に出ます。『#50』で両者は激突しますがハルの執念が勝り、シネストロは首の骨を折られ殺されます。
ハルは全グリーンランタンのエネルギー源であるセントラル・パワーバッテリーと融合して魔人パララックスとなり、歴史改変に挑みヒーローたちと激突しますが、最後は太陽を喰らう怪物サンイーターから地球を守るため犠牲となりました。
2004年からの『GREEN LANTERN: REBIRTH』にて、ハルがパララックスとなったのはシネストロの陰謀であった事が明かされ、シネストロが再登場。そしてハル・ジョーダンもグリーンランタンとして復帰し、対決します。また、2005年からの『GREEN LANTERN CORPS: RECHARGE』では、コルガー星の次代のグリーンランタンとして女戦士ソラニク・ナトゥが登場し、カツマ・ツイの後任として活躍していきます。後にソラニク・ナトゥはシネストロの娘であることが明かされました。
2007年から始まった、グリーンランタン関連各誌によるクロスオーバー「シネストロ・コーア・ウォー」では、シネストロにより恐怖をエネルギー源とするイエローリングを与えられた軍団シネストロ・コーアが襲来し、グリーンランタン・コーアとの全面対決が描かれます。
シネストロ・コーアには様々な宇宙人が参加していますが、サイボーグ・スーパーマン、スーパーマン・プライム、アンチモニターという中ボスからラスボスクラスの奴らまでおり、圧倒的なパワーと恐怖を見せつけました。
シネストロの目的は、多元宇宙全てに恐怖による秩序をもたらすことでした！ この戦いで、様々な色のリングを持つ軍団が独自に活動している事が明かされて世界観がさらに広がりました。また、シネストロも「元々グリーンリングに選ばれた優秀な先輩戦士であり、独善的ではあるものの独自の視点で宇宙の平和を守るための軍団を指揮している」とキャラクターに深みが与えられていきます。全2冊の邦訳版『グリーンランタン：シネストロ・コァ・ウォー』も出ているので、興味がある方は是非どうぞ。
2009年からのクロスオーバー「ブラッケスト・ナイト」では死者の軍団ブラックランタンたちを止めるべくシネストロも尽力し、最後にはブラックランタンの「死」とは逆の「生」の超パワーを持つホワイトランタンに変身！ 事件解決の一助となりました。
そのあとシネストロは再びグリーンランタンとなり、2011年からの『GREEN LANTERN』新シリーズではなんと主人公として一時期戦っていました。かつての配下・イエローランタンたちに捕らえられたシネストロは、女戦士アーソナたち生き残りのコルガー人と出会い、かつての独裁者として憎まれつつも、同胞を解放するために戦います。
しかし結局、復活した「宇宙最初のランタン」であるボルスームとの戦いで、コルガー星は破壊されてしまいました。シネストロはボルスームを倒すため、また、生き残っているコルガー人を新たな星へ移住させるため尽力しました。のちにシネストロはハルと再び袂を分かち、シネストロ・コーアのリーダーに復帰しています。
2011年の映画『グリーン・ランタン』ではシネストロ役をマーク・ストロングが好演し、厳格な先輩グリーンランタンとして新米のハルを指導したり、正義の力を得るために禁断のイエローリングに手を出したりするなど、原作を反映した活躍がみられました。この映画は沢山の宇宙人が登場するので、宇宙人好きの方にお勧めです。また、現在企画進行中の新作テレビドラマ『グリーン・ランタン』にもシネストロの登場が決定しています。
現在のGREEN LANTERN誌でもシネストロはシネストロ・コーアを率いており、銀河サミットに登場したり、新コルガー星にて二人の女性異星人をはべらせてリラックスしつつ宇宙平和のための独自行動に邁進していて、見逃せない魅力的キャラクターであります。
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