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【恐竜SFレビュー#16】ジャーニー・イントゥ・アンダーグランド

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恐竜SF紹介コラムの第16号は藤子・F・不二雄の漫画、『ドラえもん のび太と竜の騎士』を紹介する。前回は『大長編ドラえもん、のび太の恐竜』を紹介したが、今回も引き続き『大長編ドラえもん』シリーズから紹介する。

 

どんな手段を使っても生き残りの恐竜をさがしだすしかない!! By野比のび太

 

物語はのび太達が、いつもの空き地で「恐竜が生き残っているか」という話題で会話している所から始まる。恐竜が生き残っていると信じるのび太は、恐竜を発見しようとドラえもんに頼み、ひみつ道具の〇×うらない(質問に〇×で回答する〇×型のひみつ道具)で恐竜が地上に生き残っているか尋ねるものの、その回答は×であった。


回答にガッカリするのび太は、部屋に隠した0点の答案をのび太のママが探しているのを知る。答案を隠すためにドラえもんに頼み、どこでもホール(地下の空洞を探す機械)で広い空洞を発見し、空洞を秘密基地に改造し始める。


その後、秘密基地をしずか、ジャイアン、スネ夫にも紹介して、皆の秘密基地になっていくのだが、スネ夫は空洞の奥で生きている恐竜に遭遇してしまった。他の皆には信じて貰えなかったスネ夫は一人地底の奥底に進んでいくも、迷子になってしまう。

 

今、ほ乳類どもがのさばっている地上世界。もともとはわれわれの楽園だった地上をふたたび恐竜人の手にとりもどすのだ!! By地底人の祭司長

 

スネ夫を探すため、地底世界を探検することになったのび太達は地底世界で恐竜が生き残っているのを目の当たりにする。


恐竜から進化した地底人の一人、バンホーと遭遇。スネ夫は地底世界に保護されており、のび太達は地底世界でスネ夫と再会。そして、地底人が高度な文明社会を築いており、地上を取り戻すための“大遠征”を計画していたことを知る。大遠征を知ったのび太達は地底世界からの脱出を試みるも、バンホーに拘束されてしまう。


地底人の大遠征の目的はタイムマシンで中生代に戻り、地底に追いやられた恐竜を救い地上を取り戻すことだった。タイムマシンから脱出したのび太達は不本意ながらもバンホー達地底人と戦うことになってしまった。

 

のび太達と地底人の戦いの行方はどうなるのか?なぜ、恐竜が地底で生き延びることになったのか?その答えは是非ともご自身で読んで知っていただきたい。

 

大長編ドラえもんの八作目である本作は、恐竜が生き延びていた地底世界を舞台にした大冒険が描かれている。本作に登場する地底人は恐竜の中でも大きな脳を持っていたトゥロオドン(トロオドン)が地底人に進化していたことが明かされている。

 

本作では地底人との遭遇と対立、地上で恐竜が絶滅した原因、恐竜が地底世界で生き延びた謎も主軸のテーマとなっており、何故恐竜が地底世界で生き延びたかは是非読んでいただきたいが、作中でのタイムパラドックス的な種明かしは必見である。

 

本作で登場する恐竜は地底世界に生き延びていた恐竜としてティラノサウルスなどが登場し、他にもプテラノドンも登場している。本作の主要キャラクターである地底人はトゥロオドンから進化した存在で、古生物学者デイル・ラッセルが1982年に発表した恐竜人ディノサウロイドをモチーフにしている。地底世界での冒険、地底人との交流がテーマになっている大長編で、同じく恐竜が登場するのび太の恐竜とも読み比べて欲しい作品である。

 

アニメ映画版として1987年にドラえもんの映画シリーズ8作目として公開されており、本作と映画の両作とも楽しめる作品である。今年は恐竜が題材の『ドラえもん のび太の新恐竜』を鑑賞したが、そちらとも比較して読み返したい一作である。

 

なお、藤子・F・不二雄作ではなく藤子・F・不二雄原作として刊行された『ドラえもん 学習ゲームブックシリーズ②地底大魔王の謎』は地質や環境汚染をテーマにしたゲームブックであり、本作の後日談でもある。過激な地底人が地底大魔王を名乗り地上世界に宣戦布告する内容となっており、バンホーも再登場している。

 

 

作品情報

 

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書名:大長編ドラえもんVol.8 のび太と竜の騎士
著者:藤子・F・不二雄
出版社:小学館

出版年:1986年