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【恐竜SFレビュー#17】すこしふしぎなダイナソー

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恐竜SF紹介コラムの第17号は藤子・F・不二雄の漫画、『ドラえもん [恐竜編]』を紹介する。

前回、前々回では『大長編ドラえもん』、『のび太の恐竜』、『大長編ドラえもん、のび太と竜の騎士』を紹介した。今回紹介するのは、ドラえもんの短編から恐竜が登場するエピソードをえりすぐりした傑作選。12編の短編の中から、今回は6編を紹介する。

 

セワシくんときょうりゅうがりに行ってきたんだ。Byドラえもん

 『恐竜ハンター』

のび太はドラえもんから未来の世界で流行しているスポーツ、きょうりゅうがりの事を聞かされた。のび太は自分も恐竜を狩りたいとドラえもんに頼み、ドラえもんとタイムマシンで共に過去へ向かう。遭遇したティラノサウルスに細胞縮小機(生物の細胞を縮小し、小さくする光線銃)を当てるも小さくしすぎてしまい、2匹目のティラノサウルスを捕獲しようとしたところ、逆に捕まってしまった。
メガネで太陽光を集めて恐竜を撃退し、なんとか現代に戻るのび太達だったが、そのメガネが思いもよらない事態を引き起こしていた。

 

恐竜編に収録されている1作目はのび太達が恐竜を狩りに過去に戻る話となっている。『大長編ののび太と恐竜』では過去に戻って恐竜を狩るのは時間犯罪としてご法度になっているが、本作は初期に描かれた作品であるため、のび太とドラえもんは何のお咎めもなく恐竜を狩りに行っている。

 

だいじょうぶ。ネッシーはほんとにいるんだから。Byドラミ

 『ネッシーがくる』

のび太はクラスメートが参加する公開討論会「ネッシーはいるかいないか」でネス湖の怪獣ネッシーがいると主張するが、否定派のズル木に言い負かされてしまった。ネッシーがいると信じるのび太はドラえもんの妹、ドラミの力を借りてネス湖からネッシーを連れてくることになった。
ネス湖の地底と公園の池を地下水路で繋ぎ、ネッシーを連れてきてズル木に見せようとするも、ズル木との約束の時間になってもネッシーは現れなかった。時間を過ぎてようやくネッシーが出現するも、ズル木に見せることができず、のび太とドラミは諦めてネッシーをネス湖に返すが、そのネッシーを目撃した人が他にもいたのだった。

 

ネッシーの実在を巡ってのび太とドラミが奮闘する話で、のび太とズル木の討論では実際の目撃例や否定派の証拠を取り上げている。本作では実際にネッシーが実在することが明らかになる訳だが、首長竜に近い姿の怪獣となっている。なお、ネッシーは『大長編ドラえもん のび太と雲の王国』でも再登場している。

 

 

 まけるな。宇宙ターザン!Byのび太


『宇宙ターザン』

のび太は主人公が恐竜に乗って悪党を退治する特撮番組「宇宙ターザン」に釘付けだったが、視聴率が低下して打ち切り寸前になろうとしていた。宇宙ターザンの人気回復のためにのび太は番組のセットに生きている恐竜を起用しようと思いつき、ドラえもんと共に一億五千万年前の白亜紀へ向かった。


特撮番組に本物の恐竜を起用しようとする話だが、『のび太と恐竜』と同様に恐竜を桃太郎印のキビダンゴ(食べた動物は必ずなつくキビダンゴ状のひみつ道具)で手懐けていく展開となっている。登場する恐竜はティラノサウルスやブロントサウルスの他にカモノハシ竜のトラコドン(現名称:アナトティタン)も登場しているが、のび太からカッコ悪いという評価で不採用となっている。

 

なに?恐竜が出た!?Byドラえもん

『恐竜が出た!?』

ハイキングで有名な高井山に恐竜が出現したとテレビで話題となり、大騒ぎになっていた。ドラえもんは見間違いでいる筈がないと信じていなかったが、どこでもドアで実際に高井山に向かってティラノサウルスを目撃してしまった。慌てるドラえもん達だったが、それは3日前ののび太の行動が原因だった。

恐竜が現代に出現する話。ネタバレになるため詳しくは触れないが、ドラえもんの出した道具をのび太が片付けていなかったことが予想外の事態を引き起こす展開になっている。高井山に出現する恐竜はティラノサウルスやステゴサウルス、トリケラトプスや翼竜のプテロサウルスも登場している。

 

恐竜たちには長い長い旅の始まりなんだよ。Byドラえもん

『恐竜さん日本へどうぞ』

のび太とドラえもんは、のび太のパパといっしょに、博物館で開催中の中国の恐竜展を鑑賞し、中国で発掘された恐竜の化石を目にする。博物館の帰りにどうして恐竜が日本にいないのか残念がるのび太はひみつ道具の招待錠(2つに割って片方を地面に置き、もう片方を相手に食べさせることで錠剤の置いてある場所に向かわせるひみつ道具)を使って中国だった場所から日本に恐竜を連れてこようとタイムマシンで一億三千七百万年前に向かう。招待錠の効果で日本となる場所へ向かう恐竜達だったが、のび太達はあることを見落としていた。

 

本作が掲載された1981年は国立科学博物館で中国の恐竜展が開催されており、それを反映させた内容となっている。恐竜の化石が日本で見つかっていないのをのび太が劇中で残念がっているが、現実では1978年に、竜脚類モシリュウの化石が発見されている。登場する恐竜は中国大陸に生息していた肉食恐竜のユンチュアノサウルス(ヤンチュアノサウルス)や草食恐竜のチンタオサウルス、マメンチサウルスなどが登場している。

 

大ニュースだ!!すごいと思わない?恐竜の足あとの化石だって。 Byのび太

『恐竜の足あと発見』

のび太は恐竜の足あとが化石になって見つかったことを新聞で目にする。ジャイアン達にその話を知らせようとするが、そのニュースは皆が知っていたため逆に笑われてしまった。のび太は自分で恐竜の足あとを見つけるため、ドラえもんと九千万年前に向かい恐竜の足跡を作ろうとするが、肉食恐竜に追いかけられてしまった。

 

のび太が恐竜の足跡を作ろうとする話だが、恐竜ハンター同様にのび太の行動が思いもよらない事態を引き起こしてしまっている。現実でも1985年に群馬県で恐竜の足跡の化石が発見されており、それをモチーフにしたと思われる。

 

『ドラえもん [恐竜編]』はドラえもんの短編の中から恐竜がテーマの作品をメインに収録した漫画で恐竜に会いに過去に向かったり、現代に恐竜が出現するような藤子・F・不二雄が得意とするすこしふしぎな作風の作品が多い。また、恐竜展や恐竜の足跡発見など、連載当時に話題になったニュースを反映させた作品もあり、藤子・F・不二雄の恐竜に対する造詣の深さも伺える作品集でもある。


上記6編の他にも『大長編ドラえもん のび太の恐竜』の原作となった短編版やのび太達が石器時代にあるホテルに泊まろうとする『石器時代のホテル』、絶滅してしまったモアやドードーを現代に連れてくる『モアよドードーよ、永遠に』、地球空洞説と地底人が現実化する『異説クラブメンバーズバッジ』など、恐竜だけでなく古生物や絶滅動物、架空の存在に対するロマンも感じさせられる作品も収録されている。

 

大長編ドラえもんとは別の恐竜に対するロマンや魅力を堪能できる作品集である。

 

作品情報

 

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書名:ドラえもん [恐竜編]
著者:藤子・F・不二雄
出版社:小学館

出版年:1994年