sfgeneration’s blog

若手向けのSF情報同人誌『SFG』を発行しています。webではSFに関する話題やイベント情報などを発信していきます。

ブログタイトル

MENU

【恐竜SFレビュー#15】ボーイ・ミーツ・首長竜

f:id:sfgeneration:20190430224144p:plain

 

 

恐竜SF紹介コラムの第15号は藤子・F・不二雄の漫画、『ドラえもん のび太の恐竜』を紹介する。
2020年8月7日、ドラえもんの新作映画、ドラえもん のび太の新恐竜が公開された。
そこで今回は大長編ドラえもん、映画版の第一作である『ドラえもん のび太の恐竜』を紹介する。

 

ざっと一億年前も昔、白亜紀と呼ばれる時代 地球上は、は虫類の天下だった。By骨川スネ夫

物語はスネ夫が、ティラノサウルスのツメの化石をのび太たちに見せびらかすシーンから始まる。スネ夫の自慢に張り合うように、のび太は出まかせで恐竜の化石を発見すると宣言した。


化石探しを始めることになったのび太は、偶然にも恐竜の卵らしき物を発見。ひみつ道具のタイムふろしき(包んだ物や人の時間を操作する風呂敷)で化石から卵に戻し、卵から孵化させることに成功する。

 

孵化したのは首長竜、フタバスズキリュウ。ピー助と名付けられて、成長促進剤で瞬く間に成長するが、ある日、黒ずくめの男がのび太に接触してピー助を譲るように迫ってきた。
黒ずくめの男からピー助を守るため、のび太とドラえもんはタイムマシンで、ピー助を元いた時代の1億年前の白亜紀に連れていき、ピー助に別れを告げて帰還する。

 

「どうしてピー助がいじわるされるの!?どうして仲間に入れてもらえないの!?」By野比のび太

 

 

ピー助を白亜紀に戻したものの、のび太はスネ夫達に恐竜を見せると見得を切ったために嘘つき扱いされてしまった。誤解を解こうとドラえもんに頼んでタイムテレビ(過去や未来を映すテレビ)でピー助を見せるが、ピー助は仲間であるはずの首長竜から仲間外れにされていた。


実は、ピー助がいた場所は北アメリカで、他の首長竜はエラスモサウルス、種族が違ったのだ。ピー助を白亜紀に戻そうとした際に黒ずくめの男の襲撃を受けてタイムマシンの空間移動機能が故障してフタバスズキリュウのいる日本ではなく、北アメリカにピー助を連れてきてしまったのだった。ピー助を仲間のいる日本に連れていこうと、のび太はドラえもん、ジャイアン、スネ夫、しずかと共に白亜紀へ向かう。のび太はピー助と再会し、スネ夫達の誤解は解けたものの、タイムマシンの空間機能が完全に故障してしまっていた。


元の時代に戻るためには日本となる場所まで向かい、そこからタイムマシンで時間移動する必要がある。タケコプターで日本へ向かうのび太達の白亜紀の冒険が始まった。

 

のび太達は元の時代に戻ることが出来るのか?ピー助は仲間と出会う事ができるのか?黒ずくめの男の正体は何者か?その結末は是非ともご自身で読んで知っていただきたい。

 

映画原作となった初代『大長編ドラえもん』

初出は短編として1975年に増刊少年サンデーで掲載されており、ピー助を白亜紀に連れていく展開で終わっているが、1980年に映画版の公開が決定した際に長編化されたのが本作である。

 

ドラえもんの漫画は通常1話完結の短編が基本だが、大長編ドラえもんは現代とは違う時代、世界を冒険する展開で数回に連載されて1冊の単行本になっているのが特徴だ。『大長編ドラえもん』の一作目である本作は、恐竜が生息していた白亜紀を舞台にした大冒険が描かれている。


のび太達が困難に対して、時にひみつ道具で、時に知恵と勇気で立ち向かう様子が描かれているのも大長編の魅力のひとつだろう。また、本作ではピー助とのび太の交流も主軸のテーマとなっており、種族も生きた時代も違うのび太とピー助が心を通わせ、別れなければならないラストは静かな余韻を残している。


本作で登場する恐竜は白亜紀に生息していた恐竜としてティラノサウルスオーニソミマス(オルニトミムス)アパトサウルス(ブロントサウルス)が登場し、他にも白亜紀の生物としてプテラノドンや大亀・アーケロン、哺乳類の先祖・トリコノドンも登場している。本作の主要キャラクターであるピー助は首長竜フタバスズキリュウだが、現在では首長竜は恐竜ではなく、水生の爬虫類と定義されており、卵生ではなく胎生であったことが判明している。

 

首長竜の設定や直立歩行のティラノサウルスなど、当時の研究を元に描かれた恐竜の描写であるが、のび太が恐竜の生きた時代で繰り広げる冒険そのものは色あせない作品となっている。

 

アニメ映画版として1980年にドラえもんの映画シリーズ1作目として公開されており、テレビシリーズのキャストを一新した直後の2006年にはリメイク版の『ドラえもん のび太の恐竜2006』が公開されている。2020年公開で、同じく恐竜が題材の『ドラえもん のび太の新恐竜』を鑑賞する前に読み返したい一作である。

 

著者の藤子・F・不二雄はドラえもんの作者として説明不要とも言えるが、同級生の安孫子素雄(藤子不二雄Ⓐ)と合作のペンネーム藤子不二雄で『オバケのQ太郎』などを発表。藤子・F・不二雄名義では『パーマン』『21エモン』『ウメ星デンカ』などの少年向けのSF(すこし・不思議)漫画や、奇想短編として『ミノタウロスの皿』や『みどりの守り神』など大人向けの短編も発表している。

 

 

作品情報

 

f:id:sfgeneration:20200926110842j:plain

 

書名:大長編ドラえもんVol.1 のび太の恐竜
著者:藤子・F・不二雄
出版社:小学館

出版年:1980年