sfgeneration’s blog

若手向けのSF情報同人誌『SFG』を発行しています。webではSFに関する話題やイベント情報などを発信していきます。

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SFが特別な何かであった時代は、もう終わった

 

「若者のSF離れ」は本当か?

 SFを取り巻く問題のひとつに「SFファンの高齢化」があげられます。「SF大会の参加者平均年齢は、1年経つごとに1つ上がる」という、ジョークとも自虐とも取れる言説が流れておりますが、実際に大会へ参加するとそういわれるのも納得……という感じです。平均年齢が上がる理由は明確で、ずばり若手参加者が少ないことです。2016年に米子で行われた米魂では、20代以下が50人を割っているのに対し、50代以上の参加者が300人を超えていました。


 しかし、それだけを見て「若者のSF離れ」が進んでいると言うのは、少し違うのではという気がします。今でも大学SF研の活動が(規模はともかくとして)続いている大学は多くありますし、若手SF作家も続々とデビューして、様々な出版社から本を出しています。となると、「若者のSF離れ」というのは、単純に大会へ参加しなくなっただけ、とも言えそうです。それには様々な要因があるのでしょうが、今やSFというのは特別なジャンルではなくなったというのが大きいのではないかと思います。

SFは一つの時代になった


 その昔、SFは夢の一つでした。多くの作家が空想を働かせて、今とは違う世界を描き出しました。「想像力の文学」という言葉は言いえて妙ですね。この言葉は早川書房のSF叢書につけられたシリーズ名ですが、SFというジャンルを上手く言い表しています。ロボット、空飛ぶ自動車、人工知能、こういった技術はSFの中で、いずれ来るべき未来像として幾度と無く語られてきました。


こうした技術は今や想像とはいえません。すでに、目の前に迫ってきている現実そのものとなったからです。SFに語られた世界は少しずつ現実となり、私たちは高度にSF化された世界を生きているといえるでしょう。このような現代、SFは一つの特別なジャンルとしての役割を終え、拡散と浸透のフェーズに入りました。現実の物事を「まるでSFの世界」と形容するのも、もはやSFが単なる夢で無くなったという表れです。

SFGeneration(SF世代)たちの憂鬱


 このようなSFの時代を生きる者たち、特に若い世代を指してSF世代と言い表しましょう。SFの浸透と拡散は小説というジャンルにも起こっており、例えばAIやロボットというテーマをSFとして扱わず、大衆小説や純文学として受け入れられる時代にきています。SF世代は旧来のSFに加えて、このような拡大したSFをも楽しむようになりましたが、その結果SFというジャンルに拘りを見出さなくなったのではないでしょうか。その結果が、個別に小さな集まりを作ってはいるのに、全体で見ると分断されているという状況です。すなわち、SF研や同人誌即売会やTwitter上などで個々のSFクラスタができているにも関わらず、団体間同士のつながりがないような状態になっています。


この状況を何とかしたいと考えて、同人誌SFGを作りました。

SFGの理想と目指すもの、web展開について


 究極の理想は、SF世代の新しいネットワークを作ることです。これまで、SFファンのネットワークを構築していたのはSF大会です。50回以上もの大会を毎年開催していることは本当に素晴らしく、私も楽しく参加させていただいております。しかし、SF大会という形だけでは、拡散しているSFクラスタを拾い上げることは難しいことだと思います。SFGは、そのようなネットワークを構築するためのハブになることを目標としています。


 SFGはSFファンの目線から見た同人誌です。作り手は、多かれ少なかれSFが好き(あるいはSFのイベントに参加している)という共通点はありますが、それぞれの持つSFのイメージは様々です。こうした人々が集まれる場として、SFGを使っていきたいと考えています。


 さらに、紙媒体だけでは活動の広がりに限界があると考え、このたびブログの形でweb版を展開することにいたしました。web版ではさらに自由な場として、「それはSFじゃないのでは?」というような情報も含め、広く発信していきたいと考えています。

新しい時代へ


記事のタイトルに「SFが特別な何かであった時代は、もう終わった」と書きました。怒られそうですが、いいじゃありませんか。それはすなわち、SFがごく限られた人の楽しみではなくなって、より多くの人を取り込める可能性を持っているということと同じです。SFがさらに発展していくことを期待してやみません。