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宇宙警察を組織し管理する高位種族——【ガーディアンズ・オブ・ユニバース GUARDIANS OF THE UNIVERSE】

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 宇宙を自由に行き来できるほど高度に発達した種族が、宇宙の平和を守る組織を作っているというのは、日本のフィクションでもウルトラマンや宇宙刑事などの例がある通り、よくある事です。今回御紹介するガーディアンズ・オブ・ユニバースは、宇宙で最も古い知的生命体の一つで、自らは戦闘向きではないため、「恐れを知らぬ強い意志」を持つ異星人に資格と装備を与え宇宙警察「グリーンランタン・コーア」を組織し、その上司として指揮管理してきました。『レンズマン』シリーズのアリシア人と同じ役回りですね。

 彼らの部下であるグリーンランタンは、銀河を3600の区画に分けた各セクターで選ばれ、隊員の証であるパワーリングは装着者の意志の力によって発した光を「固体光」にし様々な物体を作り出せる武器でもあります。リングのエネルギーはランタン型のパワーバッテリーで補充され、そこへガーディアンズの本拠地がある銀河中心の惑星オアにあるセントラル・パワーバッテリーが全てのエネルギーを供給しています。

 

 警察上層部という立ち位置


 ガーディアンズの初登場は1960年の『GREEN LANTERN #1』で、新人グリーンランタンになった地球人ハル・ジョーダンに別の惑星での任務を下します。ガーディアンズは何人もいますが、皆同じような額が広い青い顔でローブの衣装の小さい老人の姿をしています。『#7』(1961年8月号)では、かつてグリーンランタンだったシネストロというコルガー人がその力を利用して惑星を支配したためガーディアンズが資格を剥奪した過去が語られました。ガーディアンズは主人公に資格や任務を与え賞賛したり、時には頭の硬い指示で現場を締め付けたりもする、「警察ものにおける上層部」の役割なのです。

 

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greenlantern#30(1964)


 1965年の『GREEN LANTERN #40』ではガーディアンズの前史が語られました。数百億年前にすでに不死を獲得していた彼らの中にいたクロナという科学者が、禁忌とされてきた宇宙の始まりを見る実験を強行します。超巨大な手のようなエネルギーが銀河を掴んでいる像を見て、クロナがさらに時間をさかのぼろうとした時、装置が爆発し、それが原因で宇宙に「悪」という概念が放出され、様々な惑星で殺し合いなどが起こるようになってしまいます。クロナはエネルギーに変えられ追放され、彼のしでかした事の責任を取るため同族たちは「グリーンランタン・コーア」を設立したのでした。クロナはこの話で復活し、以後ガーディアンズやグリーンランタンと何度も戦うことになります。


 1970年の『GREEN LANTERN #76』からはグリーンランタンとグリーンアローがコンビで活躍しはじめますが、もう一人、ガーディアンズの一員オールドタイマーが同行し、三人の旅になります。オールドタイマーは『#80』で異星の裁判事件に巻き込まれ、『#81』でガーディアンズから罪を問われて不死性を剥奪されますが、その後何度も登場し、アパ・アリ・アプサという本名も設定され、様々な展開のあと発狂して敵となり死亡するまでが描かれていくことになります。また、『#81』にてガーディアンズの元々の母星はマルタス星という惑星であったとされました。

 

 1977年の『JUSTICE LEAGUE OF AMERICA #141』では、ガーディアンズがグリーンランタン・コーア設立以前に、マンハンターズというロボット警察部隊を製作していたことが明かされました。このロボットたちは自らの正義を遂行するため創造者であるガーディアンズに反逆し撃退されたのですが、その後も独自に活動を続け、これが回り回って地球に「マンハンター」という別系統のヒーローを生み出すきっかけになっています。


 1981年の『TALES OF THE GREEN LANTERN CORPS #1-3』では、次元断層の向こうから侵攻してきたクロナの軍勢や、さらにその背後にいたネクロンという反生命超存在を止めるため、ガーディアンズも出撃し全グリーンランタンと共に事件を解決、次元断層を閉じることに成功しました。


 1992年に刊行された『GREEN LANTERN: GANTHET’S TALE』は、『リングワールド』など数々の名作で有名なSF作家ラリー・ニーヴンがライターを務めています。ニーヴンは「スーパーマンの子孫存続に関する考察」(短編集『無常の月』収録)という作品を書いておりコミックにも興味があり造詣が深いことがわかります。この作品では、それまでのコミックで描かれてきたガーディアンズやクロナの設定を十分把握しつつ「クロナの実験とは、宇宙創造の瞬間を宇宙の最期のエントロピーが最大となり熱的死を迎えた状態と繋げてしまった事による」「黄色の物質に通じないというグリーンランタン・リングの弱点を赤方偏移で解決する」などの科学的アイデアが盛り込まれた快作となっています。マルタス人の分派が住む巨木という独特の植物や「ダウラキスポクポク」「スワーチャーチュラ」などの奇抜なキャラクター名などニーヴンらしさが堪能でき、アート担当のジョン・バーンがパペッティア人のグリーンランタンをモブとして描いていたりもします。

 

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greenlanternganthet'stale(1992)

 

 この作品の主人公としてガーディアンズの一員であるガンセットが初登場し、ガーディアンズらしくないワイシャツにジャケットに一コマずつ柄の変わるネクタイというおしゃれな姿が微笑ましかったりしますが、彼はこれ以降、ガーディアンズ・オブ・ユニバースの中心キャラとして活躍していきます。また、1996年の『KINGDOM COME』というパラレル未来の話にて登場したクインテッセンスという超存在集団に、オリンポスの主神ゼウス、魔導師シャザム、ニューゴッズの善神の指導者ハイファーザー、謎の異邦人ファントム・ストレンジャーという錚々たるメンバーの一員としてガーディアンズの代表のガンセットも参加しています。のちに彼らは現代の話でも活躍していき、ラリー・ニーヴンが創作したキャラクターが今も未来も宇宙の平和を維持するため、他の神々と団結しているというのも面白いところです。

 

驚きの主役交代で新シリーズへ突入


 1994年1月号の『GREEN LANTERN #48』(新シリーズとなりナンバリングがリセットされています)より始まる「エメラルド・トワイライト編」にて、ハル・ジョーダンは自分の不在時に故郷のコーストシティを異星人が消滅させてしまった事に絶望し、故郷を取り戻し歴史を変えるほどの力を得るためガーディアンズに反逆、仲間のグリーンランタンを撃破しつつ惑星オアに侵攻します。事態を重くみたガーディアンズは、犯罪者であるシネストロにリングを与えて迎撃させるという策に出てしまいます。しかし『#50』にて、シネストロを倒したハルは長年の仲間であるキロウォグをも殺し、全てのエネルギー源セントラル・パワーバッテリーと融合し魔人パララックスへと変貌! これによりグリーンランタン・コーアは崩壊、ガーディアンズもエネルギーを失い全滅しますが、ただ一人ガンセットのみ生き残り、最後に残ったリングを地球人カイル・レイナーに託すという壮絶な主役交代劇が行われたのでした。


 その後はしばらくカイルが単身グリーンランタンとして活躍していたのですが、後に彼はエネルギーが異常増大した「イオン」という超存在になり、『#150』(2002年7月号)にてそのパワーをもってセントラル・パワーバッテリーを再点火させたことでガーディアンズは復活しました。この時はじめて女性のガーディアンが登場しています。


 2004年の『GREEN LANTERN: REBIRTH』にてハル・ジョーダンもグリーンランタンとして復活し、ガーディアンズ・オブ・ユニバースとグリーンランタン・コーアは元の状況を取り戻していきます。この時期より、リングにはグリーンだけではなく様々な感情により発動する何色ものリングがあり、それぞれの色の部隊が組織されるという展開となり、タイトル数も増えグリーンランタンは大発展期となります。ガーディアンズもより能動的に活動するようになり、ガンセットと共にセイドという女性のガーディアンがブルーランタン・コーアを設立し仲間たちから追放されたり、スカーという女性ガーディアンが暗躍し他の部隊へ介入を続けたあとブラックリングをつけた死者の軍団ブラックランタンを出現させたり、グリーンランタン・コーアを終わらせ別の組織にすげ替えようとしたりとガーディアンズの活動が混乱を生むことも多くなりましたが、多くの戦いを経て収束していきます。


 現在は2021年6月号で「GREEN LANTERN」誌の新シリーズが創刊されましたが、『#1』にて銀河サミットの会場でガーディアンズの代表者が射殺(!)され、『#2』セントラル・パワーバッテリーが吹き飛ばされて(!)惑星オアが壊滅するという未曾有の危機を迎えています。

 

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greenlantern#1(2021)


 グリーンランタンは2011年に映画化され、さらに現在ドラマと映画が企画進行中です。宇宙を舞台にすることも多く、登場人物の多数が宇宙人ですので、今後もこのページでご紹介することが多いタイトルになるでしょう。

 

 

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