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【恐竜SFレビュー#18】ドラえもんの算数×恐竜

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恐竜SF紹介コラムの第18号は学習漫画、『ドラえもんの算数おもしろ攻略 続・文章題がわかる』を紹介する。
15号で『大長編ドラえもん のび太の恐竜』、16号で『大長編ドラえもん のび太と竜の騎士』、17号で『ドラえもん [恐竜編]』を紹介したが、この漫画はのび太とドラえもんが算数を駆使して恐竜のいる太古の時代を冒険する算数学習漫画である。

 

ドラえもんの算数漫画とは?

藤子・F・不二雄がキャラクター原案で、ドラえもんやのび太が登場する学習漫画シリーズ、「ドラえもんの学習」シリーズが刊行されている。ジャンルは算数、国語、社会科、理科と様々で算数のテーマでも面積、小数、グラフなどを取り上げた学習漫画があるが、その中でも文章題をテーマにした『ドラえもんの算数おもしろ攻略 文章題がわかる』が刊行されている。
今回紹介する『ドラえもんの算数おもしろ攻略 続・文章題がわかる』の前作である。ストーリーは独立しているので個別に読める作品だが、『文章題がわかる』のストーリーもおおまかに説明しておこう

 

夏休みの宿題を静かな所でやりたいというのび太の願いで、ドラえもんはのび太としずかちゃんを宇宙に連れていったのだが、宇宙船のエンジンが壊れてしまい、3人は宇宙を漂流していた。漂流中に商売人のツルカメ星人に遭遇し、地球に戻るために行く先々の惑星で起きるトラブルを算数で解決しながら宇宙を旅する学習漫画である。


この漫画の舞台となるサンスー銀河に属する宇宙人は、食べるとすぐ太ってしまうクイダオレ星人や平均寿命950歳で口調がゆったりとしたスロー星人などの奇妙な宇宙人が登場し、彼らと遭遇したのび太たちはつるかめ算や植木算、分配算などの文章題を使って切り抜けていく。

 

丸い石を、1辺が5個になるように、つめてならべた正方形がある。一番外側の裂だけで何個の石がならびますか?

ここからは『続・文章題が分かる』の内容を紹介していこう。

恐竜映画、『ジュラシックワールド』を観たのび太とドラえもん。のび太が本物の恐竜を見たいと言い出す前に、ドラえもんからタイムマシンが壊れていると釘をさされてしまう。のび太が映画を見るたび過去や未来に行きたいという無茶ぶりによって、タイムマシンが酷使され壊れてしまっていたのだった。しかし、どうしても過去に行きたいとせがむのび太をドラえもんはある場所に連れていく。

ドラえもんが連れて行った場所にあるのは、古代人が作ったとされる魔法陣だった。この石板に書かれている方陣算を解くことで、過去に行ける仕組みとなっている。のび太はドラえもんからヒントを貰いながら方陣算を解いていき、過去の時代へ向かった。

 

リンゴが何個かあり、何人かで分けます。6個ずつ分けたら20個たりないので、2個へらして分けたらぴったり分けられました。リンゴは何個あったのでしょう。

 

過去へ向かう途中、時間の番人である時空神が立ちはだかるが、時空神の出す還元算を解きながらのび太とドラえもんは恐竜のいる太古の時代へ到達した。

のび太とドラえもんは草食恐竜キャンプトサウルス(現名称:カンプトサウルス)のキャンプと遭遇し、キャンプの家に招待されたり、恐竜が経営しているデパートに遊びに行ったり、恐竜の通う学校に行ったりと太古の時代を満喫する。キャンプの家族のおもてなしを受けた際は過不足算、デパートで買い物をする際は差集算、学校では集合算を解きながらトラブルを解決していった。

 

水が底からわき出ている池があります。この池の水をくみ出して修理します。全部くみ出すのに、6台のポンプを使うと8分かかります。4台のポンプでは、16分かかります。この水を4分でくみだすには、何台のポンプがいりますか。

キャンプの案内でのび太とドラえもんは恐竜の国の首都、ドラゴンシティへ向かうが、そこを統治しているのは竜王バハムートという存在だった。バハムートの命で彼の部下が地球を救う勇者を探しており、倍数算を解いたのび太は勇者と見込まれ、バハムートの竜王城へ連れて行かれた。

バハムートと対面するのび太とドラえもんだったが、バハムートは地球の生物ではなく宇宙人だった。バハムートの故郷の惑星は滅亡する寸前で地球に移住できるかを調査するためにバハムートが先遣隊として地球に来訪していたが、バハムートの種族は恐竜を滅ぼして地球に移住することを目論んでいた。

 

しかしバハムートは種族を裏切り、ダークバハムート将軍が率いる攻撃軍から地球を守るため戦っていた。バハムートの種族は頭脳戦=算数で勝敗を決しており、その為に共に戦う勇者を探していたのだった。バハムートに見込まれたのび太とドラえもんはバハムートの出す相当算を解き、ダークバハムート将軍率いる攻撃軍と算数で戦うことになる。

のび太とドラえもんはダークバハムート将軍に勝つことができるのか?そしてなぜ、恐竜は絶滅してしまったのか?その答えは是非ともご自身で読んで知っていただきたい。

 

本作は藤子・F・不二雄自身が描いた作品ではなく、あくまで藤子・F・不二雄キャラクター原案であるが、のび太とドラえもんが前半では恐竜と交流を深め、後半では算数を駆使しながら恐竜を救おうとする学習漫画となっている。

本作は算数(文章題)をテーマにした学習漫画ではあるが、


・知性を持つ恐竜が登場する
・宇宙人が登場する
・恐竜絶滅の真相が明かされる


というSFマインドのある展開で、上記展開はロバート・J・ソウヤーの恐竜SF、さよならダイノサウルスに通ずるストーリーとなっている。

 

 

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算数の学習漫画なので、文章題のテーマ毎にストーリーが分かれており、本編中でも方陣算、仕事算、ニュートン算などの文章題が登場している。作中で解説がされており、わかりやすく読めるようになっている。

 

本作ではキャンプトサウルスがメインで登場し、他にもトリケラトプスステゴサウルスゴルゴサウルスやデパートのエレベータ役としてブロントサウルス、スクールバス役としてモノクロニウスが登場しており、ユニークな恐竜の社会も見ることができる作品となっている。


本作での恐竜の生息している太古の時代は何年前とは明かされていないが、恐竜絶滅の真相が明かされるため、約6600万年前と推察できる。ただし、現実のキャンプトサウルスが生息していたのはジュラ紀である。大長編や短編のドラえもんとは異なる作風だが、読み進めながら文章題への理解を深めることができる学習漫画となっている。

 

作品情報

 

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書名:ドラえもんの算数おもしろ攻略 続・文章題がわかる
著者:小林敢治郎
キャラクター原案:藤子・F・不二雄
まんが構成・絵:村田ヒロシ
出版社:小学館
出版年:2002年