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【恐竜SFレビュー#14】恐竜アンソロジー決定版

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恐竜SF紹介コラムの第14号はアンソロジー漫画、『ぼくらの恐竜 ジュラシック・ファンタジー』を紹介する。恐竜をテーマにした漫画13編で構成されているアンソロジーである。今回は、その中から7編を紹介する。

 

いつもと変わらない静かな夜に、それは突然現れた

「襲来 Close Encounters of The Dinosaurs」

 男子学生の本条は夜中、恐竜が闊歩するのを目撃する。翌日、学校でもその話題が持ち切りだったが、彼は転校生の宮原のことが気になっていた。放課後、本条は宮原と一緒に、恐竜に遭遇してしまった。


 アンソロジーに収録されている1作目は、恐竜に遭遇してしまった少年少女の体験を描いた作品。恐竜が出現した理由もSFらしく種明かしがされており、少年の淡い青春も描かれている作品である。

「ひみつの恐竜アドベンチャー」

 恐竜好きの小学生、リュータとタケルはT-REXの体表が羽毛かウロコかを巡ってケンカしていた。リュータの母は古生物学者で、その縁もあり、リュータとタケルは発掘調査に参加することになったが、発掘現場の穴に落ちてしまう。落ちた先で2人がたどり着いたのは、プテラノドンやスピノサウルス、T-REXが存在する世界だった。


 恐竜好きな少年2人のひと夏の冒険を描いており、彼らが迷い込んだ世界は恐竜だけでなく三葉虫も存在しており、その理由も明かされるが、『ドラえもん のび太と雲の王国』を彷彿させるオチとなっている。

 

そこは、まだ見ぬ夢の場所。

「恐竜のいる島」

 考古学者のタキガワは恐竜が生きている、恐竜の島を探して航海していたが、乗組員の裏切りに遭い、海に突き落とされてしまう。生き延びた彼が漂着したのは恐竜が生息している島だった。

 恐竜の生き残りが生息している島を追い求めている青年が島にたどり着き、島での冒険を描いた作品。生きている恐竜に出会うも別離しなければならない切なさも感じさせられる。登場する恐竜の中には「恐竜博2019」で全身骨格が展示されたデイノケイルスらしき羽毛恐竜も登場している。

 

人はなぜ魅せられるのか。すでに絶滅した恐竜に

「絶滅せし者」

 とある国の研究所では極秘に生物兵器として利用するため、恐竜を再生していた。配属初日に恐竜の暴走に巻き込まれた女性研究者はある少年に助けられるが……。

 

 恐竜が『ジュラシック・パーク』同様、現代に復活するも暴走する姿を描いた作品だが、生物兵器として復活させられた恐竜の哀愁も感じさせられる。

 

恐竜諸島―この島々には数多くの恐竜が太古の姿のまま生息しており世界中の人々を驚かせた。

「ステゴサウルスのお見合い」

太平洋に浮かぶ島々、恐竜諸島。そこには恐竜が今も生存していた。世界共同の保護区として研究者や飼育員が駐在していたが、飼育員の清田は育ててきたステゴサウルス・ラッキーのお見合いを試みていた。

 

恐竜が生息する島を舞台に、恐竜の飼育員と彼が育てたステゴサウルスの交流をハートフルに描いた作品だ。

 

世界に点在する「恐竜保護区」。再生した恐竜達を保護、育成する施設だ

「恐竜育成日記」

再生した恐竜の保護区をに勤務する恐竜医の息子・弘人は、草食恐竜・プシッタコサウルスの育成を手伝い始める。

 

科学技術で恐竜が復活した世界を舞台に、その保護区で勤務する恐竜の医者と息子がプシッタコサウルスの育成に奮闘する。


人間にとってはどっちがいいんだろう?もしも、恐竜がいなければ…

「もしも恐竜がいなければ」

 恐竜が生き延びている現代。恐竜がいなければ、どうなっていたのかと考える少年、潤は夏休みの海水浴で巨大なイカに襲われてしまうが……。

 恐竜が現代まで生き延びて、かつ人間と共存している世界を舞台にした作品で、恐竜と人間、違う時代に生きた2つの種族の共存している姿を描いた優しさを感じさせられる作品。


 『ぼくらの恐竜』は収録作全て描きおろしの恐竜漫画のアンソロジーで、恐竜がタイムスリップして現代に出現、現代に生き延びている恐竜、科学技術で復活した恐竜と様々な恐竜SFのアイデアの漫画が収録されている。コンビニ用漫画の体裁であるが恐竜への魅力が充実したアンソロジー漫画である。


 巻末には代表的な恐竜を紹介した恐竜ファイルも収録されている。

 

作品情報

 

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書名:ぼくらの恐竜 ジュラシック・ファンタジー
著者:桑佳あさ、高枝景水、阿部国之、谷口あさみ、藍屋球、堀井優、ただりえこ、白樺鹿夜、マツダユカ、たかなししずえ、藤凪かおる、須田翔子、フジヤマヒロノブ
出版社:少年画報社

出版年:2019年