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様々な世界にいる我々の隣人――【火星人 MARTIANS】#6

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 この連載の1回目ではアメコミで最も有名な宇宙人としてクリプトン人を紹介しましたが、一般的に最も有名な宇宙人といえば、やはりお隣の惑星の火星人でしょう。SFの世界でも沢山の火星人が登場してきましたが、アメコミにももちろん火星人がいます。

 

これまでの連載ではDCコミックス社の宇宙人(クリプトン人、サナガー人、ラーン人)、マーベルコミックス社の宇宙人(スクラル人、クリー人)を別々に紹介してきましたが、今回はDCとマーベルの有名な火星人を両方紹介します。

 

火星人、刑事になる?


アメコミで一番有名な火星人は、1955年の『DETECTIVE COMICS #225』の巻末6ページ漫画に登場しました。「ん?DETECTIVE=探偵?」。そう、この雑誌は探偵コミック誌で、#27でバットマンを初登場させて以来ずっとバットマンが主役の雑誌。「その雑誌でなぜ火星人が?」と思われるでしょうが、この時期はバットマンもおおらかなユーモアテイストだったので有りだったのでしょう。

 

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エーデル博士という科学者が異星探査のためロボットブレインを発明し、スイッチを入れると、一人の火星人が電送されてきました。その直後、博士は心臓発作で唐突に死んでしまいます。地球に残された火星人、ジォン・ジォンズ (J’ONN J’ONZZ)は仕方なく、火星人ならではの変身能力で地球人の刑事ジョン・ジョーンズに化け、必要とあらばテレパシー、物体透過、透視、怪力、飛行などをひっそり使いつつ犯罪捜査を行うという、派手なのか地味なのか判らない設定でした。刑事としては盛りすぎな能力ですが「火星人は火に弱い」という弱点でバランスを取っています。

 

その後、DCコミックス社はヒーローもの中心に転換し、ジォン・ジォンズも火星人の姿で「マーシャン・マンハンター(「MANHUNTER」は「犯罪捜査官」の意味)」というヒーローとして活躍しはじめ、1960年には地球最大のスーパーヒーローチーム「ジャスティス・リーグ」の創設メンバーとなります。

 

マーシャン・マンハンターは、最初こそあまりヒーローとして躍進できず、チームからも離脱しました。しかし、1987年の『JUSTICE LEAGUE OF AMERICA』新シリーズ(ライターはキース・ギフェン&J.M.デマティス)で再びレギュラーとなってチームの冷静な重鎮となり、翌’88年には初の個人タイトルとなる『MARTIAN MANHUNTER』(ライターはデマティス)が刊行され「彼以外の火星人は全滅している」など世界観も更新され、彼の孤独な戦いと救いが描かれ、派手ではないものの通好みのキャラクターとして発展しはじめます。

 

1998年からは『MARTIAN MANHUNTER Vol.2』という、今のところ最長となったタイトルも創刊されました。ライターのジョン・オストランダーとアートのトム・マンドレイクによる重厚かつグッとくる展開で、双子の兄弟マ・アレファ・アクや土星人ジェムなど宿敵が登場したり、火星人はオレオが大好きという面白キャラ付けされたり、快作となっています。

 

近年でも『MARTIAN MANHUNTER』のタイトルは断続的に出ており、少しずつ設定を変えつつ発展しているのが嬉しいです。2006年の『MARTIAN MANHUNTER Vol.3』では、秘密基地に捕らえられていた同胞を救い出し、同族のために戦うという新たな姿が描かれました。最後に白色火星人を友人だとヒーローたちに紹介するところで終わるのが印象深かったです。

 

2015年の『MARTIAN MANHUNTER Vol.4』では火星人たちがテロリストとして地球を攻撃するという展開で、火星人がこれまでより化け物として描かれ、地球と火星の滅亡を回避させる戦いが展開しました。現在は、2019年2月号から全12号のシリーズとして『MARTIAN MANHUNTER Vol.5』が完結するところです。

 

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本シリーズでは、火星人は殉職した刑事ジョン・ジョーンズの姿をモデルに変身しており、同僚の女刑事ダイアンに正体がばれるという導入から刑事相棒ものになる、ある意味で原点回帰しているのが面白かったです。また、2015年からのTVドラマ版『スーパーガール』でもジョン・ジョーンズが登場しているので、海外ドラマファンにもこのキャラクターを覚えてほしいところです。

 

ウェルズのタコ型火星人がコミックに登場


一方、マーベル社の火星人といえば、1973年の『AMAZING ADVENTURES Vol.2 #18』で登場した「キルレイブン」の敵が最も有名でしょうか。この物語は何と、H・G・ウェルズの『宇宙戦争』の火星人が病原菌で死滅せず、地球征服を果たしてしまった後を舞台にしています。人類が支配され荒廃した2018年の地球で、剣闘士キルレイブンが自由を求め、ミュータント、火星人の手先となった人間、トライポッドや怪獣たちと戦い続けます。火星人は沢山の触手があるタコに似た姿で描かれており、アクションシーンに向かないためか直接登場することは少なめでした。

 

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しかし、『#36』でついに火星へ攻め込んだキルレイブンたちを相手に追いつめられ、巨大陸亀を騎馬に槍を持って抵抗しますが、幼体の孵卵器に病原菌を入れられたため、全滅する運命を辿ります。憎い敵であっても、その未来を奪ってしまったことを自覚し、苦い勝利を感じるキルレイブンが印象的です。キルレイブンは、さすがに通常のマーベルユニバースではなくパラレルワールドの話とされていますが、人気キャラクターのため『MARVEL TEAM-UP #45』でスパイダーマンと共演し、マーベルのヒーローと出会った話もあります。

 

DCでもマーベルでも、実は他にも火星人キャラはいて(一発キャラが多いですが)、さすが隣の惑星だなあと思います。同じ太陽系人として注目していきたいですね。

 

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