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防衛は、たった一人の地球人頼み?――【ラーン人 RANNIANS】#5

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今回紹介するラーン星はアルファ・ケンタウリ星系の惑星で、地球からわずか4.3光年という、宇宙の中ではすぐお隣、とても近い場所にあります。ただし、ラーン人の科学技術水準はフィクションの宇宙人としては珍しいことに地球とほぼ同じレベル。つまり超光速宇宙船を持たず、したがって4.3光年といえども移動不可能なのです。
 
ラーンの科学で唯一地球より確実に優れていたのは、光線の収束技術ぐらいでしょうか。地球と同じく、ラーン星でも自惑星以外の知的生命体に呼びかけようという計画・SETIが行われ、ラーン星から地球へ向け何度も光線が発信されます。しかし偶然にもこの光線は4.3光年を通過する間に変質し、当たった者を発信元へ短期間転送する「ゼータビーム」になりました。
 
また、ラーン星は宇宙でも要所にあったようで、1~2ヶ月に一度、別の宇宙人に侵略され続けるという目に遭っていました。この頻度は、圧倒的な被侵略回数を誇る地球と比べても驚きです。ラーン星は貧弱な技術では対抗できない事態に何度も遭遇します。しかも、ラーン星には地球のようなスーパーヒーローがいないのです。

 

ラーン星を守るのは地球人!?


ここで登場するのがアダム・ストレンジという地球人です。偶然にもゼータビームを浴び、ラーン星へ転移した彼は、ラーンの首都・ラナガーで筆頭科学者サーダスの娘アランナと出会い、侵略者を撃退します。
効果時間が切れるとアダムは地球へ再転移されますが、毎回のゼータビームの地球への着弾地点を知ったことで、地球に戻ると次のゼータビーム到達に移動→転移し、ラーン星で活躍します。これはバロウズの『火星シリーズ』のリメイクでありつつ、効果が切れると地球に戻ることが読み切り連載漫画と相性抜群という素晴らしい仕掛けでした。

 

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1962年 MYSTERY IN SPACE #78


アダム・ストレンジは光線銃と背中のロケットブースター装備という古式ゆかしいスペースオペラヒーローですが、侵略者を倒すのは銃の腕などではなく、知恵と理論というのがSFヒーローらしい素晴らしさです。
マグマの高熱に耐え地中や岩の中を移動できる地底種族相手には、硝酸アンモニウムの吸熱反応で対抗。竜巻を起こす宇宙船で攻撃してくる不死身の相手を観察し、竜巻が実体で宇宙船や人物は幻影だと見破ったり、フォース・フィールドの内側にいて攻撃が通じない海竜の攻撃の際、可視光線や電波は通過していることから、探知した電波を三角測量し海竜を操る敵の位置を発見したり。何でも吸い込む掃除機を持つ宇宙人には、相手が元素を指定して吸引していることを察知し、コスチュームに何種類もの元素を多重コーティングして対抗します。

 

設定の変更とラーン星の危機

 

1958年登場のアダム・ストレンジは一人でラーン星を救いまくる面白いストーリーでしたが、コミックが一話完結でなく連続ストーリーになるにつれ、設定が使いにくくなっていきます。そこで、効力の永続する「メガゼータビーム」の開発で、アダムがラーン星に留まれるよう設定が更新され、アランナは彼と結婚し子供も産まれます。

 

2005年の『RANN-THANAGAR WAR』では、惑星規模での転移を可能にした「オメガビーム」にてラーン星はサナガー星(ポラリス星系)の至近へ飛ばされたため、サナガー星は軌道を逸れ大破局が訪れます。サナガーからの難民がラーンへ押し寄せ、それを機に邪神教団が暗躍、ラーン星とサナガー星の間に戦争が勃発します。

 

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2005年 RANN-THANAGAR WAR #4


アダム・ストレンジはホークマン&ホークガールに協力を求め、さらにグリーンランタン(カイル、キロウォグ)スターマンオメガメンのティゴア、キャプテン・コメットといったコズミックヒーローたちが活躍。復活した死者の軍団を率いて支配者にならんとする邪神オニマー・シンに対し、キャプテン・コメットが突撃し、ゼータビーム・デバイスが投擲され打倒に成功しました。サナガー星の軌道はグリーンランタンたちにより修正され、危機を脱します。


しかし戦争は2006年の『RANN-THANAGAR HOLY WAR』へと続きます。この戦いでは魔人ロード・シナーと宗教指導者ディーコン・ダークによりサナガーから狂信者の軍団が暴徒化。神の如き超パワーを得たシナーは宇宙中・各時代に戦乱の意志をまき散らします。ヒーローたちが突入し、異次元エネルギーが人格を持ったウィアードが相討ちとなってシナーを倒し、戦争は終結しました。生き残ったラーン人たちはスローンワールドという別の惑星へ移住し、ニューラーンを建国し復興を開始します。

 

また、2010年の『R.E.B.E.L.S. #15』にて宇宙警備隊レベルズの指揮官ブリル・ドックスの手引きにより、サーダスが改良した技術で旧ラーン星はベガ星系へと転移されて再興、サナガーとも和解への道が開けました。宇宙寄生ヒトデ「スタロ」の侵略を乗り越え再び繁栄しはじめます。

 

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2011年 R.E.B.E.L.S. #26

 

宇宙を移動しまくる激動の時期がこれで一段落しある程度落ち着いたのか、2014年開始の『JUSTICE LEAGUE UNITED』ではアランナが、これまでとは逆に夫と共に地球に留まり、ヒーローチームの一員として主にカナダ方面の平和を守りました。


しかし、ラーン星とサナガー星の試練はさらに続きます。2016年の『DEATH OF HAWKMAN』シリーズにて宇宙怪人・デスペロの脅威に遭いますが、ホークマンが犠牲となって平和が訪れ、ようやく両星に和平が締結されたのです。

 

このあと2020年には「主人公を初手から地獄にブチ込む作風」でお馴染みのトムキング(元CIAという異色経歴)によるアダム・ストレンジの新作『STRANGE ADVENTURES』の発行が予定されており、ラーン星が新たにどう描かれるか楽しみなところです。

 

 

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