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そして島には謎が降る―伊藤正臣『マグネット島通信』

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子供の頃、使い道の分からない何かの部品を夢中で集めていました。かちゃかちゃと組み合わせてみたり、磨いてみたり、紐を通してストラップにしてみたり。

 

要らないものを拾って来ては、親に怒られるというのは、子供時代に誰もが経験することだと思います。今回はそんな風にがらくたを集めて遊んでいた方におすすめしたい作品を紹介しましょう。伊藤正臣『マグネット島通信』です。

 

空から降るは、謎多き物体

 

物語は、主人公でタイ語翻訳家の本山田が磁返島に引っ越してきたところから始まります。少しずつ島での生活にも慣れてきた本山田は、ある日不思議なものを見つけます。それは、空から落ちてきた謎の金属片。島の少女たちがマグネットと呼ぶそのがらくたの謎を少女たちと共に追いかけます。

 

マグネットは指先でつまめる程度の大きさで、様々な形がありますが、実は空から降ってきたこと以外にも不思議がありました。なんとマグネットは特定の条件下に置くとひとりでに、そして永遠に動き続けるのです。永久機関というわけですね。

 

水に浮かべるとくるくると回り続けるマグネット、棒に通すと回転するマグネットなどなど、動く条件は個々のマグネットによって異なります。本山田と少女たちはこのマグネットの動く条件を探っていきますが、やがてあることに気がつきます。彼の専門であるタイ語と、島に伝わる神像に書かれていた文字に、共通点があるというのです。

 

神像と空から降るマグネットの謎が少しずつ結びつき始めたとき、突然謎の物体が墜落してくるなど、沢山の謎をばらまいて1巻は終了。続く2巻では墜落してきた人工衛星のような未知の物体の謎に迫ります。

 

「すこし」「ふしぎ」な「青春」「ファンタジー」

 

このお話の見所は謎解きだけではありません。もちろん神像の台に描かれていた謎の言語をタイ語に当てはめて解読しようと奮闘する本山田も凄いのですが、彼が島にやってきたことで起こる変化に注目してほしいのです。

 

かわいい幼馴染同士の女の子2人の友情 (百合?)や島の人達の雰囲気や状況、謎の物体が墜落してきたことで起こった変化もとても丁寧に描かれています。人物描写がとても細やかで引き込まれます。青春してるなー、といいたくなるような女の子たちの心情の変化は百合好きにもお楽しみいただけるでしょう。

 

また、幼い頃にがらくたを集めていた人にぜひこの話を読んでもらい、童心にかえってもらえたらと思います。のんびりした空気の中、少し不思議な島暮らしを覗いてみませんか。

 

現在2巻まで既刊、3巻は2019年6月に発売予定です。

 

こんな人へおススメ

・子供の頃に戻りたいなという人

・スローライフに憧れる人

・青春SFっていいよね!という人

 

書誌情報

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書名:マグネット島通信

作者:伊藤正臣

出版社:新潮社

出版月:2018年2月