ガングリオンという言葉をご存知だろうか。
手首などのよく使う関節にできる良性の腫瘍である。基本的には無害だが、できる場所や大きさによっては神経を圧迫し痛みが出る場合もある。また、とても再発率が高い。
このガングリオンが最近できた。できた時に調べていて知ったのだが、どうも『ガングリオン』という漫画があるらしい。医療モノではなさそうな表紙で、内容が気になりさっそくポチって読んでみるとSFのような正義の話だった。
正義とは何か、なんのための正義かを、ヒーローと敵対する敵役の組織「ガングリオン」の視点から描いている。なぜガングリオンと名付けたのかは読み終えた今もわからないが、面白かったので紹介しよう。
戦闘は打ち合わせ通り、談合体質、3Kな現場
『ガングリオン』の世界観は機械が発達した近未来の日本をベースに考えられており、某機動戦士のようなロボットに乗って戦う。
ガングリオンは世界征服を目論む組織であり、正義のヒーローであるホープマンを目の敵にしている。だが、たくさんあるヒーローものと違うのはガングリオンの戦闘員とホープマンとの関係だ。彼等は互いに連絡を取り合い、示し合わせて台本通りに戦闘を行なっている。都合の悪い日は延期したり、台本外のことをしてクレームを言われたり……。一体なぜ、そうまでして戦うのか、どんな意味や意義があるのだろうか。
また、作中の世間から見てガングリオンは悪の組織だが、果たしてホープマンは正義なのか。アンパンマンはバイキンマンとの戦闘以外に街のパトロールや迷子の救出などを行なっているが、ホープマンにはそういった描写はなく、あくまでガングリオンを倒すことを仕事としている。だが、そんな野蛮なヒーローを世間はありがたがり正義としてみている。そして主人公であるガングリオンの戦闘員には日々怪我をして帰る自分を心配してくれる家族がいる。
どうして嫌われる職に就き毎日仕事をしているのか、なぜ闘うのか。淡々と描かれる日常の中にその答えは隠れているのだろう。頭を使わなくても読める話だが、考えながら読むことをおすすめしたくなる話だった。
GW明け、仕事に行きたくない人へ向けて送りたい一冊だ。
作品データ
書名:ガングリオン
著者:白岩久弥(原作)、いつきたかし(漫画)
出版社:ワニブックス
出版月:2009年5月